二度目のFall in Love 1
「もしもし、、元気?」
「なの?久しぶり〜。」
「私ね、明日から青学に戻るからよろしく!」
「えっ?いつこっちに戻ったの?」
「先週。でも、をびっくりさせようと思って…。」
「…。」
「どうしたの?親友が戻ってきたのが嬉しくないの?」
電話の向こうで懐かしい親友が笑っている。
「…。あのね…。
私、に言ってなかった事がある。」
「なあに?」
「私、がいなくなってから、不二と付き合ってた…。」
「…。」
「ごめん。」
「ねえ、が謝る事じゃないじゃない。
彼がを選んだならそれでいいんだよ。
彼を振ったのは私の方なんだから。」
「でも…。」
「ねえ、私、変わったから。
もうあの頃の私じゃないから、気にしないで!」
と不二周助が仲が良かったのは4年も前のこと。
それも特に告白めいたものがあったわけじゃない。
だけど、不二がの事を第1に考えていた事は誰の目にも明らかだった。
そしてその不二の事を誰よりも1番理解していたのはだった。
2人は口にこそ出さなかったけど相思相愛の関係だったと思う。
ただ、不二がの事を想えば想うほど、は不安になっていた。
それは不二が時としてテニスよりもを選ぼうとする態度が次第に増えていたからだった。
も青春学園中等部の女子テニス部ではNO.2を誇っていた。
同じテニスをするものとして、お互いを高め合いたかったにとって、
不二の自分への傾倒は、自分が不二をダメにするのではないかと言う不安だった。
自分の考えを不二にちゃんと伝えるにはまだまだ幼くて、
は不二の前から自分と言う存在を消す事でしか、彼の才能を伸ばす術を知らなかった。
中2の夏に、の父親のアメリカへの単身赴任が決まると、
は迷うことなくアメリカ行きを決意したのだった。
そして高3の春。
は4年ぶりに青春学園高等部の門をくぐった。
「ねえ、ねえ、不二〜。
乾のクラスに転校生だってよ。」
「ふーん。」
「それがね、どうも日系アメリカ人らしいよん。
だってすっごくチャーミングな金髪美人さんだって噂だったにゃ。」
菊丸が目を輝かせながらウキウキしてるのを、不二はどうでもいいくらいの感じで聞いていた。
「俺、後で乾のクラスに行ってみよっと!」
「乾〜!辞書、貸して欲しいにゃ。」
菊丸が猫なで声で乾に飛びついた。
そうして教室内をきょろきょろと見回した。
「菊丸が転校生を見に来る確立は99%だったな。」
「あ〜、ひどいにゃあ。」
「だが、そうだったろう?」
「へん、見に来るくらいいいじゃんかよぉ。
…って、いないじゃん、金髪美人さん。」
菊丸ががっかりしたように言った。
「もうすぐ戻ってくるだろう。
転校早々、もてまくってるからな。」
「へえ〜、そうなの?」
「しかし、驚くのはこれからだ。
いいか?転校生はだ。」
「へっ?」
「覚えてるだろう、菊丸。
テニスのセンスが抜群で、不二が…。」
「ちゃん?ちゃんってあのちゃん?」
菊丸は呆然としていた。
髪が長くて、普通に歩いてたら大和なでしこみたいに可愛くて、
だけどテニスをするとすごくかっこよかった。
返球のコントロールが正確で、緩急つけるラリーにいつもドキドキさせられっぱなしだった。
そして、そして、不二がすごく好きだった女の子。
菊丸はがいなくなってから一時精神的にだめになりそうだった不二の顔を思い出していた。
不二は?
不二はちゃんが戻って来たって知ったら、どう思うんだろう?
菊丸がそんな風に考えていると、
教室の後ろから数人の男子生徒に囲まれて、楽しげに笑いながら入ってきたと目が合った。
「…、ちゃん…なの?」
に昔の面影は全然なかった。
長かった漆黒の髪は肩の上で無造作に切られていて、
眩しいくらいの金髪だった。
前より幾分小麦色になった肌にその髪の色は似合っていて、
耳には小さなピアスが光っていた。
そう例えて言うなら、真面目で古風な大和なでしこがいっぺんに不良っぽい帰国子女になったような?
「あっ、菊丸君だ!
わあ〜、背が伸びちゃってかっこよくなったね!」
懐かしい声とは違って、そこには菊丸の全然知らないが立っていた。
悪戯っぽく笑うは、それでも大人びてきれいだ、と菊丸は思った。
「ちゃん、変わったにゃ。」
「ふふっ、ありがとう。
変わったって言ってくれる方が嬉しいな。」
ぽかんとしてる菊丸を残して、は取り巻きの男の子たちの方へ戻って行った。。
「菊丸。大丈夫か?」
乾が眉をひそめながらを見つめている。
「なあ、乾。
変わりすぎだよにゃ?」
取り残された菊丸はため息をついた。
「不二は、どう思うんだろう?」
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☆あとがき☆
この作品は去年の今頃書いたものでずっと放置されてました。
1年経つ前に仕上げたいと思いつつ、できませんでしたが、
1年ぶりに続きを書こうかと思います。
2005.6.12.