4.校内球技大会・その1






 「さん、ねえ?」

菊丸の声にはっとする

 「何、ボーッとしてるの?
  昨日はどうだった?
  俺、一緒に帰ろうと思ってたのにさ、さん、すぐに帰っちゃうんだもんにゃ。」

菊丸がの顔の前で手の平をヒラヒラ振っていた。

は昨日の菊丸たち、青学レギュラーの練習風景を思い起こしていた。
それは懐かしい立海大の日々を思い出させていた。
あの煌くコートの中に確かに存在していた自分。
ラケットを握り締める感触が思い出され、手の中に汗が出てくる。
打ち返しても必ず戻ってくる幸村の鮮やかなフォーム。
まだ思い出にするにはあまりにも生々しい情景には嫌というほど打ちのめされていた。

忘れるなんてことはできない。
でも・・・。


 「菊丸君、ごめんね。
  昨日は早く帰るようにうちの人に言われてたのを思い出して・・・。
  練習中に声をかけるなんてできなかったんだ。」

は自分でも白々しいと思いながら、菊丸に言い訳をした。

 「そっかあ〜。ならいいんだ。
  昨日暑かったから、さん、具合でも悪くしちゃったかと心配だったんだ。
  ね、不二。」

菊丸が不二に同意を求めた。
不二はそれには答えず、菊丸に言った。

 「そういえば、英二は球技大会、何に出るの?」
 「う〜ん、バレーかバスケにしよっかな。
  桃がバスケでダンクやるって息巻いてたから、
  その鼻っぱし、折ってやろうかな、なんてさ。」

菊丸は楽しそうだった。

 「菊丸君ってなんでもできるんだね。」

が感心するように言った。

 「ま、大体のものはおちゃのこさいさいだにゃ。
  そういえば、ちゃんはどうする?」
 「絶対出なきゃダメなの?」
 「そうだよん。でもうちの球技大会は男女混合チームのクラス対抗戦。
  チーム構成は必ず、その種目の部活やってる奴と入ってない奴とで組まなくちゃいけないんだ。
  さんの得意なものがないんだったら、俺のチームに入ってれば大丈夫だにゃ。」
 「う〜ん、でも、バスケとかはやだなあ。」

は全然気乗りしなかった。
 (球技大会当日、休んじゃおうかな・・・。)




その日の午後のH.R.の時間。
球技大会のチーム決めが行われていた。
はもう全然無関心で窓の外を眺めていた。
人数あわせで足りない所に適当に割り振ってもらおうと思っていたのだ。

と、不意にクラス内がざわめいた。
菊丸の不満そうな声が人一倍大きく聞こえたかと思うと、
は不二に声を掛けられた。

 「あれでいいよね?」

不二の口調は断定的だった。
はぼんやり黒板の文字を目で追った。

 「えっ!?何、これ?」

が立ち上がった。

黒板には『種目・テニス(ミクスド)―不二・』と書かれていた。

 「私、テニスなんて・・・。」

したくない!と言おうとして、不二の声に遮られた。

 「さんはテニスしてないから、僕と一緒でもかまわないんだよね。」

は絶句した。
確かには青学ではテニスをしてないし、
テニスをしていたことは不二しか知らない・・・。

不二の目は笑っていた。
は不二が自分にテニスをさせたがってるんだと気づいた。

 「不二、ずるいぞぉ。
  そんなら俺がさんとペア組んだって良かったんだにゃ!」

菊丸が悔しがっていた。

はガタンと椅子に腰を下ろすと、不二を睨んだ。

 「私、やれないから・・・。」
 「いいよ。やらなくて。
  僕が全部打ち返すから。」

は眩暈がするのを感じた。




  
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☆あとがき☆
 このドリを書きたくなった部分がこの球技大会の部分。
 S&T2からヒントを得て対戦させます。
 テニスのルール、まるでわかってないんですけどね。(苦笑)
 だからちょっと時間かかるかも・・・。