煌めく翼 
   −きらめくつばさ−

      1.出会い







3年の始業式が始まって数日目。
窓際の一番後ろの席で、は窓ガラスに映ってる自分を見ていた。
青学の制服が着慣れなくて、どうしても胸のリボンが気になる。
両端を引っ張って膨らみをつけてみるのだが、どうも似合わない。

その様子に気が付いた隣の席の不二周助はに声をかけた。

 「そんなに気になるの?」

はゆっくり振り返るとばつが悪そうに答えた。

 「ちょっとね。」

 「そういえばさんとは初めてだね?
  2年の時は何組だったの?」

 「え〜と、5組だったかな。」

 「かな…って。それ、おかしいよ?」

ちょうどそこへ担任が入ってきたので不二は話しかけるのをやめた。
それにしても、さんってかわいいのに、今まで噂されるような事もなかったし、
そんなに存在感がないわけじゃないのに・・・。
不二は新しいクラスでに興味を持ち始めていた。


には特別親しい友達がいる風でもなかった。
とりたててみんなの輪に入る事もしないし、
休み時間は本を読んでるか、窓から外を見ているかだったし、
特に不二が気になっていたのは、どこかここにいるのが落ち着かなく、
いつも退屈そうにしている事であった。


放課後、菊丸がに話しかけていた。
菊丸もどうやらの事が気になるようだった。

 「さんって部活何かに入ってるのかにゃ?」
 「私? 何も入ってないよ。」
 「じゃあさ、スポーツだったら何が好き?」
 「・・・。取り立てて今はないかな。」
 「見るのは好き?」
 「・・・菊丸君ってテニス部でしょう?
  私、日誌を書いてあげるから先に行ってもいいよ。」

どうやらは菊丸と話すのをやんわりと拒否してるみたい・・・。
でも菊丸のいい所は、割合そういう事に鈍感で、
でもその人懐っこさで相手をあまり不快にしないところ。
不二は部活に行く支度を整えてるフリをしながら菊丸の次の言葉を待った。

 「ああ、大丈夫。日直の仕事はちゃんとしなくっちゃねん!
  せっかくさんと話せるんだしさ。
  ね、日直の仕事終わったら、少しでいいからテニス部の練習、見に来ない?」

ああ、英二ったら積極的だな、と不二は珍しく英二の誘いを応援したくなる気持ちだった。
 
 「テニスを・・・?」
 「うん。青学のテニス部って結構すごいんだよ。
  俺が言うのもなんだけど、おかしいメンバーだらけだから、見てて飽きないと思うにゃ。
  俺のアクロバティックなテニスも見て欲しいにゃ。」

菊丸の天真爛漫な笑顔がに好感を持たせたのか、断りづらいと思ったのか、
は仕方なく同意した。

 「じゃあ、帰りがけに少しだけ覗いてみようかな。」
 「やった〜。」

それを聞くと不二はやっとカバンを取り、英二に向かって声をかけた。

 「英二、僕、先に行ってるからね。」










不二が着替えて部室を後にすると、大石と乾がすでにコートにいた。

 「やあ、不二。あそこにいるのは誰だかわかるか?」

大石が女子テニス部のコート脇のフェンスに立っている、帽子をかぶった男の方を指差した。
明らかに他校の生徒である。

 「氷帝とは違うみたいだね。」

 「聖ルドルフの制服に似てる気もするが・・・。
  あんな奴はテニス部にはいなかったと思うが。」

乾は眼鏡のふちを押さえながら答えた。

 「そうだね。確かにルドルフではないと思うな。
  どこかの偵察なんだろうか・・・。」

そう呟く不二はすでにその男の方へ歩みだした。

 「不二。どこへ行くんだ?」

大石の慌てたような声に不二はクスッと笑った。

 「本人に聞いてみるよ。」









不二は帽子を目深にかぶった長身の男のそばに近づくとニッコリしながら尋ねた。

 「うちの女子に気になる子でもいるの?」

その男は憮然と答えた。

 「いや。ちょっと人を探してるんだが・・・。
  テニス部にという子がいると思うんだが。」

 「新入生だったら、僕もまだ全員は把握してないんだけどな。」

 「ああ、すまん。3年のなんだが。」

 「さん?あれ、それなら僕と同じクラスだけど・・・。
  僕は3年の不二。君は?」

 「立海大附属高校テニス部副部長の真田だ。
  はうちから青学へ転校したんだが、連絡先を絶ってしまったんでな。
  ここへ来れば会えると思ったんだが・・・。」

真田の思いつめたような表情に不二は何かモヤモヤしたものが湧き上がるのを押さえる事ができなかった。
彼女が立海大にいた事も意外だったが、
そこの副部長たるこの男が彼女を探してる、という事に少なからず驚いていた。

 「さんはどこの部活にも入ってないって言ってたけど。」

不二は先程の菊丸との会話を思い起こして答えた。

 「が・・・テニスをしてないのか?」

真田は不二の言葉に驚いていた。

 「さんはそっちではテニス部にいたの?」

今度は不二が驚いていた。

 「ああ。女子テニス部の部長だった。」



そう答えた真田の視線の先に、今しがた来たばかりの菊丸との姿があった。

 「す、すまん。不二だったな?
  どうしてもと会って話がしたいんだ。
  ここで失礼するよ。」

そう言うと真田は大股での方へ向かった。
の驚いた表情・・・。
不二は動く事もできず、真田に促されて校門へと向かう二人を見送った。




しばらくして不二が菊丸たちの所へ戻ると、菊丸の落胆した声が飛び込んだ。

 「不二〜!せっかくさんを誘ったのに、
  すんごいしかめっ面の男に取られちゃったよ〜。」

 「あの子の知り合いだったのかい、不二?」

大石が不二に聞いてきた。

 「ああ、立海大附属高校テニス部副部長の真田って言ってた。」

 「ほう。あの全国優勝常連校か。
  真田といえば、泣く子も黙るテニス界の皇帝と呼ばれてる男だ。
  で、彼女とは一体どういう関係なんだ?」

乾が興味本位で不二に聞いてきた。

 「さあ。さんは立海大にいたらしいけど・・・。」

 「ちぇ〜。っていうことは、真田ってさんの彼氏かにゃ。。
  あ、でも別れたのかも・・・。
  なんかさん、迷惑そうな顔してたもんにゃ〜。」

菊丸は相変わらず自分の都合のいい方に解釈しようとしていた。
その言葉を聞きながら、不二も、真田がの相手でないことだけを願わずにはいられない気持ちだった・・・。








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☆あとがき☆
  なんとなく思いつきで描き始めてしまいました。
  先の予定は全くありません。(きっぱり)
  続くかどうか、自信がないのですが(おいおい)、
  とりあえずupしておけば、やるしかないだろう・・・ということで。(笑)

2004.8.18.