極上生徒会 〜立海大編〜 2
立海大の校舎は見た目は近代的であったが、
4階の突き当たりに位置する生徒会室の扉は妙に年代モノであった。
まるでどこかのお屋敷のような凝ったデザインの彫刻は仰々しくて、
そこだけ異空間へとつながるのではないかと想像させてしまうだけの風格があった。
扉をゆっくり開けてみると、本当にそこは別世界のような落ち着いた雰囲気の部屋だった。
豪華といえば豪華だけど、絢爛というわけではなくて、
立海大の歴史という重みを仕舞い込んである、そういう部屋だった。
生徒が使うには贅沢な調度品であるのに、
でも、選ばれた生徒会のメンバーならきっと使いこなしてしまうのだろう。
そう、多分、幸村のような人間なら。
は天井まである立派な書棚に並んである、
資料や学校史、部活動の記録、年度別生徒アルバムなどの背表紙を指でなぞりながら、
部屋の奥へと進んだ。
各部活の優勝旗やトロフィーなども鎮座してるガラスケースは圧巻だった。
会議をするためのテーブルも中等部とはえらくかけ離れている。
はただただ感心するばかり。
そうして奥の部屋へ続く小さなドアが目に入った。
は躊躇いがちにそのドアのノブに手をかけた。
そっと覗き込んだ部屋には1組の男女がいた。
はその2人を視界に入れるや、慌ててドアを閉めた。
まさか先客がいるとは思わなかったは、
ドアを静かに閉めるという注意を怠ってしまった…。
高鳴る胸の音を恥じながら、動く事が出来なかった。
だって、まさか、こんなところで…キスシーンを見ちゃうなんて!?
しばらくして呆然とするの目の前でドアが開いた。
中から出てきたのは、モデルのようにすらりとした3年生だった。
「驚かせちゃったかしら。」
綺麗な微笑を浮かべてその人は別に恥じる事もなくの目を覗き込んだ。
「あなたが新しい副会長さんね?
噂どおり可愛い人ね。
なかなか大変だと思うけど、頑張ってね。」
その人はそういい残すと静かに部屋を出て行った。
はその先輩の後姿をぼんやり見ていた。
大変って、何が…?
と、不意に後ろから聞き覚えのある声がした。
「何、そんなとこで突っ立ってるんじゃ?」
振り返ると仁王が開いたドアにもたれかかっていた。
トレードマークの尻尾のような髪が目に入る。
「に、仁王君こそ、こんな所で…。」
「こんな所で?」
はニヤリと笑う仁王が苦手だった。
詐欺師とか女たらしとか、とかく仁王の噂はあまりいいものではなかったし、
現に上級生とキスしてる現場を見てしまったわけだし…。
「生徒会室って俺には似合わんと思うとるんじゃな?」
「…。」
「俺、これでも会計やることになっての。
今、会計の引継ぎしてもらって、
まあ、そのお礼ってとこかの。」
「会計?」
「ああ。」
「だって、仁王君だってテニス部のレギュラーじゃない…。」
「大丈夫じゃ。柳生も会計だし、雑務はブン太やジャッカルがおるけんの。」
「それって…。生徒会メンバーがみんなテニス部なの?
柳君はそんな事一言だって…。」
「柳の言葉を真に受けたかの?
あいつはテニス部の参謀じゃき、あんまり信用せん方がええのう。
それより…。」
仁王がつっと右手での髪をすくい上げた。
「副会長とゆっくり親睦を深めるゆうのも、会計の役得のうちかな。」
の心の中で危険人物接近の警鐘が鳴る。
苦手だけど、見つめられればそこにはどこか憎めない仁王の瞳がある。
は反射的に1歩退いた。
「信じられない。
生徒会を何だと思ってるの?」
は仁王を睨みつけるが、仁王は口元をほころばせるだけで、
余裕たっぷりにを見下ろす。
「じゃけん、幸村が決めた事は絶対やし。
ま、部室よりこっちの方が居心地ええから、
部活のミーティングもここでするって、
真田も偉く気乗りしてたがのう。」
悠長に答える仁王も仁王だが、
テニス部のメンバーが揃いも揃って生徒会のメンバーらしいことに、
は信じられない気持ちで一杯だった。
そうでなくともテニス部は忙しい時期に入るはずだというのに、
あの真田までが気乗りしてるなんて。
は踵を返すと真っ直ぐドアに向かって進んだ。
「どこ行くつもりかの?」
は振り返らずに怒った口調で答えた。
「こんなふざけた話があっていいものですか!
決まってるでしょう?
本人に確かめに行くのよ!」
「…怒った顔も可愛ええのう。」
の後姿を見送りながら、仁王は携帯を取り出した。
「…ああ、今そっちへ向かったわ。
なあ、俺も結構気に入ったとよ。
お前さんには悪いが、これからは協力はできんのう。
どういう意味かて、そのまんまじゃ。
ま、第1印象はええとは言えんけどのう。
…そういうことやき。」
携帯をしまうと仁王は軽く背伸びをした。
久々に本気モード出さんと 厳しかろのう
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★あとがき★
あれ、こんな展開になるはずじゃあ…。(^^;)
さて次の相手は誰にご登場願いましょうか?
2005.5.29.