手塚ゾーン 2
普通あり得ないでしょ?
手塚君とは同じクラスになった事もない
生徒会?もちろんそんなのに私が選ばれるはずもない
同じ委員会になった事もない
部活?まじであんな凄いテニス部なんて入りたいとも思わない
頭が良い訳でも容姿が良い訳でもない
目立つ所なんて皆無
存在を主張した事もない
だから手塚君に見初められる訳がないんだ
それなのに手塚君は私の事が好きだと言ったらしい
友達の悪ふざけだと思った
そんな冗談を真に受けてみるほど退屈してる訳でもなかったから
同姓の他の子の事を言ってるんだと思った
だけど最近私の視界に手塚君が入って来る
なんていうか、誰かの背景に必ず写っている同級生みたいな?
気づいたら気づいた分だけいろんな手塚君が私の周りに写り込んでて
そ知らぬ顔してわざとやっているんだろうかと思うほど
それなのになぜか私が手塚君を追いかけてるみたいに思われて
私が行くところ行くところに現れているのは彼の方なのに
彼の居るところ居るところに私がいるように思われるのはなぜ?
「手塚君、いい加減にして?」
「何がだ?」
「私の周りに近づかないで。
目障りなんですけど?」
「心外だな。」
な、なんですって!?
迷惑してるのは私の方なんですけど?
「手塚君は何もしてないって言うの?」
「・・・。」
「ほら、ストーカー行為をしてるのは手塚君の方じゃない?」
「いや、俺はそんな事はしていない。」
「じゃあ、何なのよ?
分かるように説明してよ?」
無表情な手塚君は初めて私に笑いかけた。
「ああ、手塚ゾーンを発動したまでだ。」
「へっ?」
「は俺から逃れる事はできない。
お前がこの技に掛かったという事は
無意識のレベルで俺たちの相性がいいという事だ。」
「な、何それ?」
「お前は俺の事が好きになるという事だ。」
あり得ないでしょう!?
あの手塚君がそんな非科学的な事を言うなんて!!
「絶対ならない!」
「なる!」
「な・ら・な・い!」
「いや、なる!」
私、何の恨みを買ってこの秀才君と
こんな低レベルな会話をしているんだ?
っていうか、これ、手塚君なの?
「らしくないよ、手塚君?」
「何がだ?」
「ぶっちゃけイケメンで秀才でテニスも天才で、
そんな雲の上の方が私を好きなはずないじゃん?
百歩譲って手塚君が私に合わせたとしても
それ間違ってるから。
釣り合い取れてないから。
気の迷いだから。
誰かと勘違いしてるだけだから。」
「は俺の技が失敗だと言うのか?」
「いやいや、そんな事言ってる訳じゃないよ。
ただ、大体手塚ゾーンってテニスの技だよね?
こういう事に使っていい技じゃないから?
テニスボールを引き寄せるものでしょ!」
何なんだ!
手塚君との初会話が手塚ゾーン談義?
おかしいよ、変だよ、手塚君。
「あのね、手塚君。
手塚君って恋愛した事ないでしょ?
嘘でも人並みな事言わないと信じてもらえないんだから。」
「人並みって何だ?」
「だから自分の気持ちを言葉にしないと
伝わらないって事よ。
あ、でも今更私に言っても通用しないから。」
嫌味を込めてにっこり笑って踵を返そうとしたら
手塚君は私の腕を引き寄せた。
「ああ、十分理解している。
言葉で伝わらない時は物理的に伝えることもな。」
ああああああ、あり得ない!!!!!!
私、手塚君とキスしてる////
それもフレンチじゃない!?
て、手塚君・・・、絶対間違ってる////////
「知らなかったか?
手塚ゾーンは物理的な技だ。
俺の欲するものは必ず俺の元に引き寄せる事ができる。」
そうして精神的なダメージを食らわせる訳ね・・・
手塚ゾーン、おそるべし!
☆あとがき☆
手塚部長、誕生日おめでとう
こんなあなただったら素敵です!
2008.10.8.