激ダサ上等!










長太郎の教室の前で
長太郎とあいつの姿を見かけてしまった

なんでだ?

なんであいつが長太郎と笑っていやがるんだ?


ストレートに頭に浮かんだのはその言葉ばかりで
俺は長太郎に用事があった事なんてどうでもよくなって
といって疑問に思ってしまった事を解決するには体が言うことを利かなくなっていた


あいつはクラスメートの中でも特に気が合うヤツだった

女と付合うのはそれだけで面倒くさくて疲れるから
キャーキャーいちいち騒がれるのは本当にうざかった

跡部とか忍足なんて適当に喜ばせる事やってりゃいいって言うけどよ
そんな事していつまでも纏わり付かれるのは
正直 気が重たい

だからあいつが傍にいてくれるとそれだけで救われる気がしてた


ねえ、さんって宍戸君の何?


そう勘違いされるたび、それもいいかと思ってきた


長太郎にはそんな曖昧な、って笑われたが
気まずくなるより今のままで十分だったし、それ以上望む事なんて俺には考えられなかった


なのに


長太郎とあいつの大きな身長差があまりにもきれいに見えた

すっぽり収まってしまいそうなあいつの体を
長太郎が今にも抱きしめてしまいそうな錯覚に
それを振り払うよりも俺はお似合いのカップルとして不覚にも受け入れてしまっていた


心がささくれるようだった

俺の中で長太郎はすごくいいヤツだったから
俺なんかといるよりあいつは幸せなんじゃないかと
誕生日に失恋気分を味わうなんて
全く激ダサの境地だと自分を呪った








放課後、俺の前に立つはすげぇ怒っていた


「なんなのよ!!」

「何がだよ?」

「なんで今年はへらへらと全部受け取ってるのよ!」

「ああ?俺の誕生日プレゼントなんだぜ?
くれるっつうのを断るのも悪いだろ?」

「今までそういうの、全然受け取らなかったじゃない?」

「お前には関係ねーだろ?今年の俺は変わったんだよ!」

売り言葉に買い言葉、もうあいつとのぬくぬくした関係はこれで終わりだと思った

「宍戸のバカ!!!!!」

彼女の手にあった箱がまっすぐに飛んできて俺の顔面にぶち当たった

傷心の俺にこの仕打ちは酷いんじゃねーか?


あいつが泣きそうな顔で立ち去ろうとしたのを止めたのは長太郎だった

全く、長太郎のヤツは天然で王子様だよな


「宍戸先輩、どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもねーよ。お前こそ何しに来たんだよ?」


あいつは長太郎に似合うと思ったが
俺の目の前で本当に彼女を抱きしめてるさまに俺の中で何かが切れた

長太郎はいいヤツだ

だがな、俺は長太郎にだけはすんなり渡したくない気持ちもどこかにあったんだ


「長太郎!!お前、俺の気持ちを知らない訳じゃねーよな?
お前の方こそ俺に言う事があるんじゃねーのか?」

「宍戸先輩、俺がこの手を離したら先輩は逃げちゃいますよ?」

「なんだと?」

「宍戸先輩こそ、プレゼントを見てから言う事があるんじゃないですか?」


不適に笑う後輩は落ちていた箱を顎で指し示す

俺は長太郎の語気に負けてあいつが投げてよこした箱を拾い上げる


リボンにはさまれたカードの文字が
俺には後悔という文字にしか見えて来なかった・・・


「…悪ぃ!」

俺の言葉に長太郎はくすりと笑うと
あいつの両肩を押して俺の方に向かわせた

両手で顔を隠してる彼女に俺は激ダサだな、と呟くしかなかった

「宍戸のバカ・・・。」

「だよな・・・。」

「私、宍戸の何?」

「俺の彼女に決まってんだろ!」

彼女の頬がピンク色に染まるのを心底可愛いと思った

あいつになら何言われても面倒くさくねぇなって思った



「ねえ、ここで抱きしめてくれないとカッコつかないんだけど?」

「ああ? な、何言ってんだよ?」

「だって、みんな見てるし・・・。
このまま終わったら私、宍戸の誕生日に告白して
みごと玉砕されたって思われちゃうよ?」


あああああ、俺ってほんと激ダサだな!


そう思ったら、勢いよくあいつの肩をつかんでノリでキスしちまった

周囲から悲鳴が沸き起こって
俺たちはどんだけの観衆の前でやっちまったんだって焦ったぜ
 

けど、俺は激ダサ上等!!って叫んでやった




なあ、こんな俺でもいいんだよな?













☆あとがき☆
ついノリで書いちまったよ(笑)
宍戸、誕生日おめでとう〜
2007.9.29.