カウントダウンクリスマス












「明日、俺に時間くれない?」


冗談かと思ったら至極真面目な顔で突然そんな事を言われた私は
別に用事はないけど、なんで?と聞く以外、
彼の真意を測る言葉を持たない


「クリスマスまであと1ヶ月しかないんだよな・・・。」


相変わらず意味不明なことを言われて
帰るに帰れなくて鞄に手をかけたまま私は英二の顔を凝視した。


「俺さ、今年のクリスマスには好きな奴に告白しようと思ってる。」


またまた驚き発言に、だからなんでそんな事を私に言うかな?と
思わずしかめ面をしてみせた


確かに英二とは仲がいい

仲はいいけど今までお互いのコイバナは避けて通ってきた

英二も聞かなかったし、私も尋ねなかった

英二に彼女が出来た時にはもちろん
英二と一番仲がいいポジションは明け渡す気でいた

だけどやっぱり英二の口からそんな話がついに出てきたかと思うと
せっかく明日は英二の誕生日だったのに
お祝いする気も半減していた



「クリスマスにさ、なんか喜ぶものを贈りたくってさ、
何がいいかわかんないからさ、明日選んでもらおうかと思ってさ。」

照れ笑いする英二の言葉に
私の最後の役目が英二の恋の応援かと思うと
まだまだ先のクリスマスなんか来ないで欲しいと思う


「英二ってば、片思いの子がいたんだ?」

「うん、まあね。」

「知らなかった…。」


そう呟いた時の空しさなんて知りたくもなかった


「英二、明日、誕生日じゃない?」

「うん、だけど付合ってくれたら俺がケーキでも奢るからさ。」


明日が英二と過ごす最期の誕生日になるかと思うと
きっとケーキを食べながら泣いてしまうかもしれない


私は自分のコイバナを英二にしなかったことを悔やんだ



クリスマスまで失恋のカウントダウンが始まるのだから



「自分の誕生日に人にケーキ奢るなんて信じられない。」

「いいから、いいからさ。」

「どうせなら誕生日に告ればいいじゃん!」

「へっ?」

「先延ばしにしたっていいことなんてないよ?」

「そうかにゃ?」

「そうだよ・・・。」



クリスマスに失恋しようが、明日失恋しようが、
どっちにしたって辛くなるのは同じこと


だったら

もう友達でいるのも今日で最後だってかまわない

英二に渡すつもりだったマフラーは私が巻いてもいい

真っ赤なマフラーは私の心を温めてくれるかもしれないから





「うん、わかった。」

「うん。…じゃ。」







「明日から俺の彼女になって!」







また唐突な告白に持ち上げようとした鞄は机の上で横倒しになった


「そうしたらクリスマスが来るまでずっと心配しなくてもいいもんな。」



ニカッと笑う英二の笑顔を今日始めて見たような気がした




「英二のバカ!!」

「へっ?」




明日からなんて言わないで今日から彼女にしなさいよね!











クリスマスまであと一月前のこと








☆英二、誕生日、おめでとう