催促
部室の隅に山積みにされた包みが物語ってる
ルーキーだった小生意気な赤也も
立海3強に並ぶ位の人気だって
超えてやる ぜってぇ超えてやる
そう息巻くのが彼の口癖で
がむしゃらに向かって行っては毎日意識を失うほどしごかれて
その度に水の入ったバケツを持っていく私の気持ちなんて
赤也には全くわからないんだろうなって思ってた
勝ちにこだわって 人一倍負けず嫌いで
仁王に「ワカメ野郎」って言われるのが大嫌いで
顔色が変わるぐらいの切れモードで相手を打ちのめす赤也を
本当は直視できない私
立海大の伝統を守るためその重責は幸村の比ではないだろうに
やがては訪れる世代交代を前に
もっと強くなりたい、もっと変わりたいと思うのは
仕方のない事だと思っても
ひとつ年を重ねた赤也に手放しでおめでとうが言えないでいる
このままどんどん私の知らない赤也になっていくようで
それならそれで
半分失恋したようなものだと諦めかけていたら
「先輩はくれないんスか?」
差し出された手に何?って聞いたら
部室の隅のプレゼントを指差され
「俺、一番欲しい物、まだもらってないんスよね。」
と私の好きな顔で迫られた
「ちゃんと先輩たちには了解取ったんスから
もう遠慮はしません」
先輩たちの洗礼も1年前のようにスタミナ切れで苦汁をなめることなく
欲しいものを欲しいと言えるくらい
俺、強くなったからと
いつの間にか自信ありげに抱きすくめてくる後輩のぬくもりに
弱腰になってる自分はなんて情けないんだろうと思ったら
泣くつもりなんてなかったのに
赤也の胸にじわじわとシミを作ってしまった
「先輩、待たせすぎッスよね、俺。
でも、もう絶対不安にさせたりしませんから
だから俺に先輩の気持ち、全部ください!」
まじめな声でそんな風に言われたら
もうどうしようもなく赤也が好きな私には
赤也にどこまでも引っ張って行って欲しいと願ってしまう
「赤也、そんな殺し文句まで誰に教わったのよ?」
涙を拭いてくれる赤也に半分拗ねたように言ったら
すみません、と素直に謝られた
もう、本当に先輩たちは手取り足取り赤也に指導してくれたようで
でも誕生日を迎えたからといってすぐに大人になる訳でもなく
見上げたその先に
違う意味で顔色の変わってる赤也が可愛くて
抱きしめたまま動けないでいる後輩の
両肩に手を差し出して背伸びをすれば
私からの誕生日プレゼントは
多分赤也が一番願っていたもの
私も赤也が一番好きだよ
あとがき
25日は赤也の誕生日だったんだね
ダブルスで頑張ったからSSにしてみました