君が僕を見つけて
        僕は君を探すよ 3









の探している人はまさにここ、テニス部のコートにいた。

それも立海大のテニス部部長、幸村精市。




彼に告白して玉砕した女の子たちのいかに多い事か…。
それでも彼の甘いマスクに夢中になる子は後を絶たず…。
けれど付き合っても3日と持たないと噂されている、
かなり性格の悪いイメージだった。



その噂もにとってはどうでもいい事ではあったのだが、
けれど無視できるほど確信はなかった。

噂の張本人と捜してる人が本当に同一人物であるのかどうか…。


ただ言える事は、今の目の前でテニスをしているのが幸村であるなら、
多くの女子が彼に夢中になるのもわかる様な気がしていた。



 「私、テニスってもっと単純なものだと思ってた。」

の言葉にブン太が苦笑した。

 「いや、あいつらがすごすぎるんだけどな。
  幸村も真田も全国トップクラスだし、
  あのまま、プロでも通用するし…。」

 「すごいね。」

は心の底からそう思った。

真田の力強いスマッシュも圧倒されるものがあったが、
それを華麗に拾い上げる幸村のフォームは素人目に見てもきれいだった。



 (やっぱり彼だよね?)




は改めて幸村の後姿に見惚れていた。




  『名前を知って幻滅するような人でも?』




 (ううん、幻滅なんてしないよ。
  私は名前で好きになったわけじゃないんだもの。)






 「なあ、幸村、呼んでこようか?」

ブン太が立ち尽くしてるの横顔を見つめながら言葉を掛けた。

 「ううん、丸井君。
  せっかく練習してるんだもの、私、ここで待ってる。」



そう言って微笑むの顔をめがけて黄色のテニスボールが鋭く飛んできた。


  ガシャーン!!


 「きゃぁ!?」


幸いボールはフェンスに阻まれてに当たる事はなかったが、
あまりの驚きにはしゃがみ込んでた。


 「大丈夫か?」

ブン太の言葉と同時に、近くのコートから赤也の明るい声が響いた。

 「丸井先輩、すいませーん!!
  大丈夫ッスか?」


と次の瞬間、赤也の悲鳴が聞こえた。


 「いたたた…。
  部長、何すか?
  わざとじゃないッスよ〜。」


幸村の打った球は赤也の背中に命中したようだった。


 「赤也。コントロールがなってないね。
  ブン太、赤也しごいていいから…。」

 「ええっ? 俺、真面目にやってたッすよ。」

 「赤也、それ以上文句たれるとお前、帰れねーぜ。」


ブン太が赤也のコートに向かうのと入れ替わりに、
幸村がのそばに大股で歩み寄った。

の傍らにしゃがむとの顔を覗きこんだ。



 「驚かせてしまって悪かったね?」

 「あっ、だ、大丈夫だよ。」

が顔を上げるとそこには大好きな人の笑顔が。

 「やっと会えたね?
  俺は幸村精市。」

 「うん、私は。」

指し出された幸村の手につかまると、
幸村はそっとを立ち上がらせた。

 「そ、そうだ、つぶれてなければいいんだけど。
  はい、これ。
  お誕生日、おめでとう!」

そう言って渡された包みを幸村は嬉しそうに受け取った。

 「ありがとう。
  俺の誕生日に来てくれて本当に嬉しいな。
  ねえ、今も俺の事、好きかな?」

そう囁く幸村の声は真剣そのもので。
は頬が火照るのを恥ずかしく思いながら答えた。

 「私、今も幸村君のこと好きだよ?
  テニス部の幸村君だったのはちょっと意外だったけど…。」

 「ふふっ、俺って悪名高いから?」

 「やだ、そんな意味じゃ…。」

 「いいよ、別に。
  だって今まで好きな子に出会わなかっただけなんだから。
  でも、の事は本当に好きだよ。
  なら俺の事、何でもわかってくれそうな気がする…。
  俺、を大事にしたいんだ。
  だから、ずっと俺の傍にいてくれるかな?」

 「私でよければ…///」


が頷くと幸村は優しくを抱きしめた。

暖かくて大きくて、はやっぱり幸村は優しいと感じていた。

多分誰にでも優しいわけじゃなくて、
にだけ特別優しくなるに違いない…。




 


 名前なんて知らなくったって

 彼のいい所はたくさん知ってる

 名前に恋したんじゃないの

 あの人だから好きになったの




 私の大好きな人へ


     お誕生日 おめでとう












 The end



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☆あとがき☆

 幸村君、お誕生日おめでとう。
私と同じ3月生まれで嬉しいですvv
なんとかお誕生日に間に合わせたくって
慌てて書いてしまったので納得のいく出来じゃないんですが、
どうか許してください。(ぺこり)

2005.3.5.