クリスマスの二人   2





渡り廊下から眺める中庭がのお気に入りだった。

きれいに手入れのされた中庭には、
人の背丈ほどのゴールドクレストの木が等間隔で植えられていた。

そしてクリスマスを迎えるにふさわしく、
それらの木々にはかわいいオーナメントが吊り下げられていた。




は小さくため息をついて中庭をぼんやりと眺めていた。

今頃クラスの子達はなんて噂してるだろう?

菊丸はみんなから根掘り葉掘り、不二と自分の短かった付き合いについて
詮索されてるのだろうか?

不二は?

不二はなんて答えるのだろう?




その先を考える気にはなれないでいた。








 「なんで飛び出して行っちゃったの?」


が振り返ると、そこには不二が少し困ったような顔をして立っていた。

なんで不二がそんな表情を浮かべているのかにはわからなかった。

困っているのはの方だというのに…。


 「だって…。」

 「何?」

不二は優しい眼差しでの言葉の続きを待っているようだった。

 「あんなの…、付き合ってるうちには入らないから。」

 「…。」

 「ふ、不二君だって困るでしょ?
  私と付き合ってた事があるなんてみんなにわかったら…。」

不二は小さくため息をついた。

 「僕はそんな風には思ってないよ。」

 「私、不二君と一緒だと何喋っていいかわかんなかったし、
  今だって、クラスメイトだって思ってても緊張するし…。」

 「困ったな。」

 「えっ?」

 「僕は今だって君の事、ただのクラスメイトだなんて思ってないんだけどな。
  そういう事にしておいて、段々慣れていって欲しかったんだけど。
  やっぱりショック療法の方がいいのかな?」

不二はクスッと笑うと、の手を引いて自分の胸の中へ包み込んだ。

それだけで身を硬くして真っ赤になってるは、
今の状況が何を意味してるのか考える暇もなかった。

 「あのね、好きな子と一緒にいて平然としてられる程、
  僕だって余裕はないんだよ?
  ほら、ドキドキしてるのは君だけじゃないだろう?」

あったかい不二の胸の中ではじっと耳を傾けていた。

不二の鼓動が早いのか、自分の鼓動の方が早いのか、
なんだかそれはどっちでもいいような気がしていた。

 「僕はが好きなんだ。
  ただ一緒にいるだけで幸せだなって思う。
  無理して何か話さなくちゃなんて思わなくていいんだ。
  その時、思った事、寒いねとか、宿題やった?とか、
  そんな一言でもいいんだ。
  ううん、毎日、こうやって君の体温が感じられる時間があれば、
  それだけで十分なんだけどな。
  今、こうしてる事は、君にとって苦痛?」

不二の言葉の余韻に浸りながら、
顔だけ妙に熱くて、は顔を上げることができない。

だけど、去年言えなかった事だけはちゃんと伝えたい。

 「…嫌じゃないよ?
  私も、不二君の事、好きだから///」

 「うん。ありがとう。」










    ********








 「で?まさか、二人っきりでクリスマス、過ごしたいなんて言わないでしょうね?」

手を繋いだまま不二とが教室に戻ってくると、
開口一番、が怒ったような口調で、でもその顔は笑っていて、
クラスのみんなも冷やかしながらもやっぱりな、とか、よかったね、とか言ってくれる。

 「みんなさえよければね、
  僕たちはみんなと一緒にクリスマス・イブを過ごしたいよ。」

不二が満面の笑顔で答える。

は相変わらず顔が赤くて、みんなの顔もまともに見られないけど、
でも、ぎゅっと握ってくれてる不二の手が嬉しくて、
ずっと不二の手だけ見つめていた。


 「不二君がフリーじゃないって言うのはこういう事だったのね?
  もついに彼氏持ちかぁ〜。
  これだからクリスマスって侮れないのよね。」

の言葉に菊丸がニッと笑う。

 「あ、じゃあ、俺と付き合う?」

 「何それ?取ってつけたような告白はお断りよ!」

 「え〜、そんなあ。」

 「ま、クリスマスにもう一度チャンスあげるから、頑張って?」

 「よし、俺、決めるからねん!」

Vサインを出す菊丸と、珍しく照れたようなが驚いたような視線を向ける。

すると不二がを振り返って、耳元に甘くささやいた。



 「ね!いい感じでしょ?」








The end



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☆あとがき☆
 今年のクリスマスは「学園祭の王子様」が
私へのプレゼントvv
できればクリスマスの王子様やバレンタインの王子様も
欲しいなあ。(って、ないからこんなサイトを作ってる訳で…。)
早く不二君を攻略したいけど、
あんまり早く攻略するとつまらないからな。(笑)

2005.12.24.