好きな人の写真って欲しいよね
それが片思いなら
なおさら欲しいよね
会えない時もこっそり見つめてられるもの
シャッターチャンスは一度だけ!
「、不二君のインタビューしたいでしょ?」
生徒会副会長のが囁く。
私、は現在不二君に片思い中です。
で、生徒会書記という肩書きを使い、不二君に生徒会新聞用のコメントをもらう、という理由をつけて、
不二君の写真を撮ろうと思ってるのです。
もちろん生徒会新聞はちゃんとあります。
青学テニス部が全国大会に行くことになったので、レギュラー陣の意気込みを紹介したいというのがの狙い。
まあ、多くの女子は青学テニス部には関心が強いので、こんな企画、がはずすわけがない。
生徒会長の手塚が不在なだけに、企画物はついついの嗜好に偏りがちだけど…。
それも仕方ないよね?
は菊丸君が好きなんだから。
「でも、一人でインタビューするって言うのはちょっと気後れするなあ〜。」
「大丈夫よ。告白するわけじゃないんだし、今回の目的は不二君の写真ゲットでしょう?」
はふふんと笑った。
確かに告白なんてするつもりもないし、できるわけがない…。
だって、全校女子生徒の憧れの的だよ、テニス部は。
まして不二君に思いを告白するなんてことは、最難関の司法試験に合格するくらいの難しさ。
「ちゃんと手はずは整えてあるから、あとはが3−6の教室に行けばいいだけよ。」
の手回しの良さに感心しつつも、いざとなると気が重い。
がいくらクラスメイトといえども、片思いの不二と1対1というのは緊張する。
「やっぱり、行ってくれない?」
「何馬鹿なこと言ってるのよ。
私は菊丸君とアポ取ってあるんだから、も頑張んなさい。」
そう言われては重たい1眼レフのカメラを持つと、のろのろと生徒会室を後にした…。
階段を上るとそこは3−6の教室だった。
廊下の壁に掛けられてる大きな鏡に、教室の中が映ってる。
鏡の中の教室の中に、窓の外を見ている不二が映ってる。
は鏡の中の不二を見つめていた。
(ああ、やっぱり不二君ってかっこいい!
そういう事言ったら、怒るかな?
怒るって言うより、私のことも一山いくらのジャガイモくらいにしか見られないんだろうなあ。)
はため息をついた。
と、鏡の中の不二がを見ていた。
は慌てて3−6の教室に入った。
「あ、ごめんごめん。
不二君、待たせちゃったかな?」
は平静を装うと不二の隣の席に座った。
「さんって、鏡の中に入ろうとしてなかった?」
不二はクスクス笑っている。
「えっ?やだ、そこまで天然じゃないけど。」
は誤魔化すかのように慌てて言うと、カメラを机の上に置き、用意しておいたレポート用紙を取り出した。
「えっと、早速ですが、生徒会新聞に載せるためのインタビューを行います。」
不二は相変わらず笑ってる。
「ねえ、録音してるわけじゃないんだから、もっと普通にしゃべってよ。」
(う〜、なんでひとこと言うたびに変なこと言ってくるかな。)
は心の中でそう思いながら、とにかく任務は遂行しきゃ、と思い直す。
「関東大会では立海大附属に苦戦したみたいだけど、感想はいかがでした?」
「そうだな、楽しかったよ。」
「へぇ〜、そうなんだ。試合って楽しいの?」
「そりゃあ、僕は勝つからね。」
(うっ!?さすがレギュラーNO.2だと次元が違うのかな?
不二君ってもっと謙遜した言い方すると思ってたけど。)
「じゃあ、全国大会の意気込みは?」
「青学優勝、これしかないでしょう?」
「う、うん。そうだね。」
(私ってば、ちゃんとインタビューできてる?
なんか不二君の答え、短すぎてに文句言われそうな気がする…。)
「え〜っと、じゃあ、全国優勝っていう夢がかなったら、その後はどんな風に考えてるの?」
(やっぱりプロになるとか言うんだろうなあ。)
「普通の高校生活を楽しむ。」
「はい?」
「…今まで我慢してたことを全部する!」
不二はこの上ない微笑を口元にたたえてをじっと見つめる。
は蛇ににらまれたガマのようになぜか変な汗が出るのを感じた。
「あのう、それは聞いてもいいことなのかな?」
「うん?さんがどうしても聞きたいって言うんならね。」
(う〜ん、意味深なお言葉。不二君だって健全な男の子なんだから、いろいろやりたいことはあるんだろうし。
でも、それって聞いていいことなのかどうか、というと、聞かない方がいいんだよね?)
が黙ってると、不二は机の上のカメラを指差した。
「このカメラ、さん、使えるの?」
「えっ? あっ、うん、一応ね。
でもちょっと重いんだよね。」
は不二が話題を変えてくれたことに感謝しつつ、そうだった、今日の一番の任務は写真だった、と気づいた。
「そうそう、生徒会新聞に写真載せたいから、撮らせてもらえるかな?」
そういうとはカメラのレンズケースをそっとはずした。
不二は前髪をさらりとかき上げると廊下側に立った。
「窓側だと逆光になるからね。さんがそっちに立って。」
は言われるままに窓を背にして重いカメラを顔の前に持ち上げ、四角いファインダーを覗き込んだ。
教室の戸口から向こうの壁に掛かっている大きな鏡が見えた。
その鏡に焦点を合わせると、鏡の中にはとその後ろに立っている不二の姿が見えた。
「あっ!?」
その瞬間、は後ろから不二に抱きしめられてるような格好になっていた。
カメラを支えてるの左手に不二の左手が添えられ、シャッターボタンの位置にあるの右手に不二の右手が重なり、
の右頬には不二の顔がくっついていた。
「動かないで。」
不二が囁いた。
パチリ
の思考回路は止まっていた。
鏡の中の自分と不二。
それは夢なのだろうか…?
「初めての二人の写真だね?」
不二がやっぱりクスクス笑いながら言った。
はまだ呆然と立ち尽くしたまま、鏡の中の自分を見ていた。
真っ赤になってる自分、それを楽しげに見ている不二。
「全国で優勝する前にやりたいことがひとつ叶ったみたい。」
そう言いながら不二はをもう一度抱きしめた。
「あの鏡の中の僕たちは未来の姿。
僕はが好きなんだけどな。」
「……。」
好きな人の写真がほしいよね
その中の写真に自分も一緒に映ってたら
それは一生の宝物…
The end
back
☆あとがき☆
「シャッターチャンスは一度だけ!」の歌を聴きながら書き上げました。
私的には、ヒロインが撮ったような写真がまじで欲しいです!!!!(笑)
だって好きな人と一緒に映っていて、しかも好きな人に撮ってもらったっていう、
2度おいしい写真!!