氷帝栗須魔巣物語  4






12月24日。




結局忍足は他のメンバーには自分の彼女になったと宣言し、
彼らが苦心して取り付けたとの約束を全部ないものにしてしまった。

けれど、から引き受けてしまった書庫整理だけは残ってしまったため、
2人はイブの朝、図書館にいた。


 「忍足君、ごめんね?
  別に忍足君が手伝う事はないんだけど。」

 「ええねん。早う終われば、買い物しに行く時間はたっぷりあるやろ。
  それに、長太郎に手伝いに来られると、気が気でないんや。」

 「でも、鳳君、最後まで粘ってたよね?」

 「あいつは可愛い顔して、意外に引かへんからな。
  長太郎の一球入魂はあなどれんのや。」

ま、そういう奴でないと氷帝の頂点に立つことはできんやろな、と忍足は思う。

作業は意外に早くはかどり、と忍足は昼過ぎには図書室を後にする事ができた。

 「そやな、どっかでお昼食べながら、
  今日の予定でも立てよか?」

忍足は二人で過ごすクリスマス・イブの夜を思いながら、
の嬉しそうな、はにかんだ笑顔に心躍る気持ちであった。





 ♪〜

 「なんや?」

 「あれ、からメールだ。

  書庫整理、お疲れ様。
  お礼に素敵なクリスマスパーティにご招待します。
  夕方、忍足君のマンションで待ってます。

  あれ?どういうことかしら?」

 「はぁ〜?
  なんで俺んち指定なんや?」




 ♪♪〜


今度は忍足の携帯が鳴った。

 「跡部か?」

 「ああ、俺だ。
  今夜はお前んち、貸切だからな。」

 「なんで俺のうちなんや?」

 「ああ?たまにはこじんまりしたホームパーティーも面白そうだからな。」

 「あのなあ、せっかくやけど、
  俺はと2人で過ごす予定なんやで。」

 「俺様の好意を無駄にする気か、あーん?
  もういろいろ発注済みだぜ?
  ツリーだってお前の部屋にはないだろうが?
  これで連れ込むつもりだったとはな。」

 「な!? 跡部、お前今どこにおるんや?」

 「お前のマンションに決まってるだろうが。
  今、樺地にツリーを運ばせたところだ。
  さっさと来いよ。」

 「お、おい。鍵かかってたやろ?」

呆然とする忍足の耳に岳人の声が聞こえてきた。

 「クソクソ侑士!!
  俺らを出し抜いた罰だからな!」

 「なんやと!」

 「やーい、侑士の間抜け〜。
  俺ら、ちゃんのこと、まだ諦めてないC〜。
  クリスマスはみんなのもんだよ〜ん。」

遠くの方でジローの声も聞こえる…。

 「なあ、景ちゃん、これは嫌がらせか?」

 「まあな。
  あいつらの気持ちも収まらねーみたいだしな。
  ま、諦めるんだな。」

忍足はため息を吐くと携帯を切った。


 (あいつらに情けは無用やな。)






 「忍足君?」

心配そうに忍足の顔を覗きこむに、
忍足は苦笑しながら手を差し出した。

 「て〜つなごか!」

忍足とは手をつないだまま、校門へと歩き出した。

 「クリスマス・パーティ、みんなでやることになったの?」

 「そうらしいわ。」

相変わらず苦笑いを口元に残したまま忍足が答えた。

 「忍足君は不満?」

 「ま、跡部が関わってるんや、
  今更どうにもならへんやろな。
  は?」

 「うん?私はみんなでやれるならそれも嬉しいよ?
  大勢でクリスマスって、初めてかも。」

の笑顔に忍足は目を細めた。

 「そうか…。
  が楽しい、言うてくれるんやったら
  俺はどっちでもええよ。
  ま、あいつらにこれ見よがしに俺らの事、
  見せつけたるけどな。」

 「じゃあ、みんなにも何かクリスマスプレゼント、
  買わなくっちゃ。」

何がいいかな、と考え込みだすに忍足は思わず立ち止まる。

 「なあに?」

 「なあ。俺には特別なプレゼントはないんか?」

 「えっ///?
  あ、そうだよね、今渡してもいいの?」

がまじまじと忍足を見上げる。

 「ああ〜、そういうんとちゃう。」

 「えっ?」

 「そやな。
  例えば、今から俺がって呼ぶから、
  は俺の事、侑士って呼んで欲しいな。
  な、これって特別やろ?」

 「…。」

 「なんで黙るん?」

 「は、恥ずかしいよ。」

 「でも、ええ記念やろ?
  イブが来るたび、侑士って呼んでもらえたな、って思い出すやん。
  な、ええやろ、?」

 「う、うん…。」

寒さのせいでない頬の赤みに、忍足ははやっぱり可愛い、と呟く。

 「ほら、俺の名前、呼んでぇな。」

 「ゅ、ゆう…し。」

 「もう1回。」

 「侑士///。」

 「、好きやで!!」



つないだ手をしっかりと引き寄せると、
忍足はそのまま、の唇にキスをした。



   きっと一生忘れられないクリスマス・イブのキス!



灰色の空からはまだ目には見えない小さな粉雪がゆっくりと2人に舞い降り始めていた。







   The end



   Back






☆あとがき☆
 うわ〜、安易に立ち上げたクリスマス企画、
 氷帝はもののみごとに玉砕です。
 中途半端でごめんなさいね〜。(笑)
 とりあえず、忍足のキャラソン「て〜つなご。」は
 忍足の純情バージョンかなあと思ったもので。

 で、イブの夜はこうして氷帝メンバー全員で過ごす事になるわけです。

 お付き合いくださった方、
 ありがとうございました。

2004.12.24.