マネージャーに愛を込めて
「不二!」
昇降口の手前で名前を呼ばれた。
その声は振り向かなくったって分かるけど
呼ばれたのが素直に嬉しかったから、声の主が近づくのを待ってから
ゆっくりと振り向いた。
「何?」
「不二はクリスマス、何か予定がある?」
細めの色付き眼鏡をかけてる彼女は
青学の優秀なマネージャーで
あの手塚と並び称されるくらい真面目なんだけど
どこかいつも抜けていて僕は密かにその天然ぶりを楽しんでる。
「そうだね。あると言えばあるし。」
「なくもできる?」
そりゃあ、君がどうしてもって頼むなら
僕はどんな用事でも断れるけどね。
「何で?何かあるの?」
なんとなく嫌な予感はするんだけど、
でもちゃんと聞いておかないと
君の事だからその口からどんな言葉が出てくるのか心配だな。
「じゃじゃーん!!」
マネージャーのは後ろに隠していたチケットを不二の顔の前にひらつかせた。
「今、超話題作の映画の招待券が2枚あるんだけど、
クリスマスに使わない?」
「へぇ〜、よくこんなものが手に入ったね。」
「そりゃあ、マネージャーですから。
部員の皆様のご要望にはなんなりとお応えできなくては
敏腕マネージャーとは言えないもん。」
「ふーん、それが僕へのクリスマスプレゼントって訳?」
「ふふっ、それだけなんてせこい事は言いません。
はい!!」
勢いよくもう一方の手に握られていた手紙は
冗談じゃなくてもラブレターに見えるんだけどな。
「こっちは?」
「あのね、隣のクラスのさんから。
不二も前に彼女はいい声してるよね、とか言ってたじゃない。
その子がね、不二の事、好きなんだって。」
「…だから?」
「もう〜、不二ったらそういう所は鈍感なのね?
だーかーらー、さんを誘って、クリスマスをラブラブに過ごせばって事!
もう、レギュラーは人気あるのにみんな全然欲がないんだから。
どうしてこう、素直にクリスマスを楽しもうって気がないのかしら。」
いやいや、それは多分大きなお世話だと思うんだけど…。
そう言えば英二や大石に最近彼女が出来たのものおかげだって言ってたけど、
何もレギュラー全員に彼女を作らせようと頑張らなくったっていいと思うんだけど。
はそれでいいの?
「ねえ、なんでそこまでやるの?
明らかにマネージャーの仕事の範疇じゃないって思うよ?」
「大体さ、みんなその気になればすぐに彼女なんて作れるのに、
わざと作んないでしょ?
それで毎回毎回コートの周りで騒がれて御覧なさいよ。
後輩たちが可哀想だと思わない?
ほんとにいい迷惑よ!
今の時期に彼女作れば、来年のバレンタインデーは大騒ぎにはならないでしょ!?」
大真面目に言うの目つきは真剣で、
僕は心からため息をつきたくなる。
仕方ないか…。
「わかった。
さんには僕から直接断っておくよ。」
「ええっ?」
「だってマネージャーにそこまでさせるのは酷でしょ?」
「さんの事、気に入らなかった?」
「大いにね。
僕にだって好きな子はいるんだけどな。」
僕はそう言うと、の手の中から手紙の方だけを抜き取った。
「こっちの券は当日僕に直接渡してくれるかな。」
「当日?」
「そう、クリスマスにね。
あっ、ちゃんとおめかししておいでよ?
は何着ても似合うと思うけどさ。」
「な、何?」
「だから、ラブラブなクリスマスにしてくれるんでしょ?」
「誰が?」
「が、僕に。」
僕の言葉について来れない君が固まったままだったから、
その可愛さに思わず右の頬にキスしてしまった。
これはクリスマスデートの予約の印!
クスッ、クリスマスには君をマネージャーから解放してあげるよ。
だから、覚悟しておいてね。
The end
Back
☆あとがき☆
メリクリ〜!!
今年もクリスマスがやってきた。
ジャンプフェスタの後、ちょっと睡眠不足気味で
どうにもこうにも筆が進まなくてすごくやばい!?
とりあえず不二君だけさきにUPしました。
これでドキサバ来ちゃったら、完全に引き篭もりそうだ…。(笑)
2006.12.22.