俺・・アンタより、背、高くなったんだけど?

いつまでも、先輩風吹かせないで欲しいんだよね。

可愛い後輩だって思ってる俺が、したいと思ってること

アンタが知ったら、きっと驚くんだろうな。














同じ思い












「リョーマくん、今日の部活、遅れないで来てよ?」


昼休み。

昼寝をするために屋上で寝転がっていたリョーマ。

声を掛けられて、それまで顔に乗せていた本を取って声のするほうに目をやると

テニス部の部長である カチローこと加藤勝郎が横に立っていた。



「なんで? 今日って、なんかあんの?」

「ほら、やっぱり忘れてる。今日は先輩たちが来てくれるんだよ。」


「ふぅーん。先輩たち、来るんだ。」


「うん。今回は3〜4人来るって、桃ちゃん先輩が言ってたよ。」

「3〜4人?」

リョーマが聞きたかったのは、たった一人の名前だったのだが

そういうことに疎いカチローが気づくはずもなく、つらつらと先輩の名前を挙げていった。


「桃ちゃん先輩はいつもだけど、今回は不二先輩や英二先輩も来てくれるんだって。」

「へぇ・・」

さして気もない風で、また目を瞑ってしまったリョーマにカチローが続けた。


「そうそう、マネだった先輩も来てくれるらしいよ。」





先輩が・・・






内心の動揺を抑え、リョーマは「ふーん」と気の無い返事をして、体の向きを変えた。

















つい2年ほど前までは、自分もここの生徒だったのに。

卒業してしまった途端、まるで目に見えない垣根が出来てしまったかのよう。

は、気後れにも似た気持ちを抱きながら、青学の門の前に立っていた。



ちゃん。」

名前を呼ばれて振り返ると、そこには笑みを湛えた懐かしい顔。


「あら、不二くん。みんなは?」

良かった。一人じゃなくなった途端、見えない垣根が消え去るのをは感じていた。


「うん、もうすぐ来ると思うよ。相変わらず、時間厳守だね?」

「ふふ・・そうじゃなきゃ、青学テニス部のマネは務まりませんでしたからね。

 そういう不二くんだって、早いじゃない?」

ちゃんが、絶対もう来てるだろうと思ったからね。早く越前をからかってやりたいし。」


不二の言葉を聞いて、は溜息をついた。


「もう・・不二くんったら、相変わらずみたいね?」


「クスッ・・そうかな? ま、何にせよ楽しくなりそうだね。」


面倒なことにならなきゃいいけど。

マネ時代の頭痛が、甦る思いのだった。
















「あ、不二先輩に先輩!」

テニスコートに不二とが姿を見せると、それまで練習のために散らばっていた2・3年生が集まって来た。

1年生は、「あれが噂の不二先輩だ」と遠巻きに囁き合っている。



「やぁ、みんな、頑張ってるかい?」


「今日はありがとうございます。」

不二の問いに、部長のカチローが挨拶をしようと前に進み出た。


「ふふ・・カチローくん、立派な部長さんぶりね。」

に微笑みかけられたカチローは、頬を赤らめながら答えた。


「い、いいえっ! 本当は、僕なんかよりリョーマくんの方が部長に相応しいんですけど・・」


「俺は、部長なんてガラじゃないからね。」


「リョーマくん!」


フェンスに寄りかかったままのリョーマを咎めようとしたカチローを

不二が「良いんだよ」というようにニッコリと微笑んで制した。



「越前・・また背が伸びたんじゃない?」



不二の言葉に、改めてリョーマを見たは、その通りだと頷かずにはいられなかった。

中学時代、英二から「おチビ」の愛称を付けられていたリョーマだったが

高校に入っても、その身長は大して伸びることがなく、当時3年だったよりも低いくらいだった。



それなのに・・・

「今じゃ、乾くんより高いんじゃないの?」

リョーマを見上げながら、悔しそうに呟く

「さぁ・・乾先輩が来れば、分かるんじゃないスか?」

得意げに言うならまだしも、さして気のなさそうに答えられて

はカチンときてしまった。






―― 相変わらず、可愛くない。






むぅーっと口を尖らせてたら、リョーマがニヤリと笑った。





なんでだろ・・・ドキドキする。








そんなとリョーマのことを、不二が見つめていたことに

二人は全く気づいていなかった。

















リョーマがサーブ練習をしているコートにを伴ってやって来た不二。


「久しぶりに、ワンセット、どうだい?」

「いいっスね。」

不敵な笑みを湛えたリョーマが、サーブを止めて不二に近づく。


片や、いかにも人のよさそうな笑みを返した不二が口を開いた。


「でも、ただ試合するだけじゃ、つまらないよね?」


含みを持たせた不二の言葉に、不審な気持ちを隠そうともせず、リョーマが尋ねた。


「何か魂胆でもあるんスか?」


「酷いなぁ。僕は、どうせなら何かスリルがあった方が面白いんじゃないかって思っただけだよ。」


リョーマは、その真意を確かめようとでもいうように、不二をじっと見つめた。


「例えば?」


「そうだなぁ。勝った方が、ちゃんを手に入れる・・なんてのはどう?」


これには、のみならず、リョーマも面食らって叫んだ。


「なっ!」「不二くん!?」


二人の慌てぶりを楽しそうに眺めながら、不二が続けた。


「クスッ・・越前、もしかして、僕に勝つ自信がないとか?」


「そんなワケ、ないじゃないスか! 分かりました。やればいいんでしょ?」


「フフ・・ そうこなくっちゃ。」


コート上へ歩き出した二人に向って、我に返ったが叫んだ。






「二人とも、どういうつもり!?」





「聞いての通りだけど?」


普段と変わらない態度で微笑む不二に、心なしか頬を高潮させてソッポを向くリョーマ。


二人を見ているうちに、怒りが湧き上がってくるのをは感じた。





「いい加減にしてよっ! 私はモノじゃないんですからね!!!」





そう叫ぶと、は踵を返してテニスコートから走り出した。











「クスッ・・相変わらず、短気だよなぁ、彼女。」


「・・・って、先輩怒らせちゃって、どーすんですか、不二先輩っ?」


自分に詰め寄るリョーマにも、どこ吹く風。

それどころか、いつもクールなリョーマの慌てぶりに、笑いを堪えきれないといった様子の不二。


「にゃろう・・・」


走り去ると、目の前の不二を見比べたかと思うと、リョーマはを追って走り出した。





「不二ったら、チャレンジャーだよにゃー。」

ハラハラしながら一部始終を見ていた英二が近づいて来た。


「だって、あの二人って、誰かが後押ししないと、いつまで経ってもあのままじゃない?」


「そりゃそうだけど・・・」


今日、手塚が来てなくて良かった・・・と、本気で思った英二だった。

















先輩っ!」


なんなくに追いついたリョーマが、の腕を掴む。


「離してよっ!」


「ヤダ!」


1年の時と変わらない、その駄々っ子のような返事に、思わず笑ってしまった


「何、笑ってんだよ?」


「だって・・リョーマったら、全然変わらないんだもん。」


クスクス笑っていたは、リョーマの目つきに、その笑いも徐々に引いていくのが分かった。


「・・・リョーマ?」




―― どうして、そんな目で私を見るの? まるで・・・









をグイッと引き寄せたかと思うと、リョーマが顔を覗き込んで言った。



「全然変わってないかどうか・・試してみる?」


「えっ!? ちょっと・・リョ・・っ!」











リョーマが、有無を言わせずの唇を奪う。




肩を掴まれ、顔を上向きにされているは、それでも目一杯背伸びする格好になった。




―― リョーマ・・やっぱり、背、高いんだね・・・




自分を抱き寄せている逞しい腕、厚い胸板、どれをとっても、可愛い後輩だったリョーマの姿ではなく

自分に口付けている相手が、一人の男性だということを意識させられた。







激しい口付けに、が何も考えられなくなったころ、リョーマが唇を離して言った。



「When I met you for the first time, I've been falling in love.」


そして、ニヤリとして付け加えた。


「You are the same as me.」




「まったく・・自惚れやなんだから。」


上目使いに自分を睨むに、ニヤリと笑ってリョーマが囁いた。



「違うっていうつもり?」





―― 敵わないわね・・・



クスッと笑うと、は背伸びしてリョーマに口付けた。


突然のことに、虚を衝かれたリョーマの頬が赤く染まる。




「クソッ・・やっぱ、先輩には敵わないや。」


面白くなさそうに呟くリョーマに向って、が微笑んだ。


「あら・・そんなことないわよ。“私はあなたと同じ気持ち”なんでしょ?」


の笑顔を眩しそうに見つめながら、リョーマが宣言した。







「絶対に・・アンタに似合う男になってやるよ。」







―― もう、とっくになってるわよ。



心の中ではそう思いながら、「期待してるねv」と微笑む


「ちぇっ・・」とソッポを向くリョーマ。


二人の恋は、始まったばかり。
















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Reincarnation 桜(キノ)さまと相互リンクさせていただきまして
その記念に夢を押し付けました^^

キノさんのリクが

高3になったリョーマ君。
久々にOBとしてやって来た先輩たちに見劣りしないくらい、
大人びたリョーマ君がヒロインに堂々と告白するって感じ。

実はこれに、部長になったリョーマというのもあったんですけど
管理人、どうもリョーマって部長ってイメージが出来なくて
「実力はもちろん部長なんだけど、本人がやりたくなくて・・・」という設定にさせてもらいました^^;

それから、文中の英語なんですが、相互記念のキノさんの夢の中で
真田が鮮やかに英語を喋ってくれるシーンがありまして
じゃ、帰国子女のリョマが喋らないのもなんだなーと、無理矢理とってつけたようですね。すみません^^;

中学生でも分かる英語・・ってことで、訳は載せませんが
ま、強いて訳すと

「初めて会ったときから、アンタのことが好きだったんだよ。」
「アンタも、俺と同じだろ?」

ってな具合でしょうか(笑)

とても、英語科出身とは思えませんねぇ(T-T)
当時の担任が見たら、きっと嘆くことでしょう★

ではでは、キノさん。素敵な夢を頂いたお返しがこんなんですみません^^;
コレに懲りずに、今後ともどうぞよろしくお願いしますv



☆相互リンク記念リクへのお礼☆

 広瀬澪さまに、大人びたリョーマ君をお願いしました。
 私の中ではいつまでたっても不二君たちの後輩で、
 かわいい年下の男の子でしかないリョーマ君!
 それをいつも素敵な大人の夢を書かれてる澪さんに託したのですが、
 本当に格好いいリョーマ君に改めて惚れ惚れしてしまいました。
 きっとぶっきらぼうな所は変わらないだろうけど、
 テニス同様物怖じしない性格で迫る(攻める?)彼は
 いまや先輩たちと肩を並べる存在ですね。

 お忙しいのにいつもながらの鮮やかなカウンターに脱帽です。 
 こちらこそ、これからも仲良くお付き合いさせて下さいませvv
                       木之本桜より


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